不要な不動産の処分方法って?
不要な不動産の処分でお悩みの方
実家を相続したり、離婚したりなどの理由から、建物や土地などの不要な不動産を抱えてしまうケースがあります。不要ながらも不動産の処分方法が分からず、そのまま所有している人は多いのではないでしょうか。あるいは、売却を試みたものの上手く買い手が見つからず、諦めてしまったという人もいるかもしれません。不動産を所有していると、使っていても使っていなくても固定資産税や管理費用などが発生します。しかし、たとえ不要で負担だけがかかる不動産でも勝手に放棄することはできません。法は不動産の所有権放棄を認めていないからです。そのため、不要になってしまった不動産は早いうちに適切な方法で処分することが大切です。ここでは、いらなくなった不動産の処分方法を詳しくお伝えしていきます。
不要な不動産を処分する4つの方法
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方法1:活用する
不要な不動産を処分する方法としてまず挙げられるのが「活用」です。不要な不動産を以下のように活用することで、収益を得ることもできます。
・土地信託
・駐車場・トランクルーム・コインロッカー・自動販売機・広告掲載 ・賃貸 |
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1. 土地信託で活用
「土地信託」とは、土地の運用を信託会社に任せ、配当金として、収益の一部を受け取るものです。そのため、自己資金なしで収益を得られる可能性があります。土地活用を希望しているものの、労力をかけたくないといった人におすすめの方法です。
土地信託には、信託期間中の土地の所有権は信託会社に移転されます。
信託期間の終了後の土地の扱いには、主に「賃貸型」と「処分型」の2種類があります。
- ◎賃貸型
信託期間が終わると、信託会社が建てた建物の所有権も地主に移るタイプです。このタイプでは、信託期間中に得られる収益を配当金として受け取り、信託期間終了後には建物も手に入れることができます。
- ◎処分型
信託期間が終わると、土地を売却するタイプです。このタイプでは、信託期間中に建物を建てたり、開発したりすることで土地に付加価値が生まれ、高値での売却が可能になることもあります。
土地信託には、以下のようなメリットもある一方で、失敗する恐れもあることを把握したうえで、不要な不動産の活用方法として検討しましょう。
メリット | デメリット |
・専門知識が不要で手間がかからない
・信託受益権の売買も可能 ・相続対策にもなる |
・土地信託できない場合がある
・必ず収益が得られるとは限らない ・仲介手数料が必要 |
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2.駐車場・トランクルーム・コインロッカー・自動販売機・広告掲載で活用
お持ちの土地がある場所が、利用者が多い場所であれば、駐車場やトランクルームとして活用する方法も利益が見込めるでしょう。
駐車場としての活用をご検討の場合、月極駐車場・コインパーキング・立体駐車場・機械式駐車場など様々な方法がある中で、どの形式で貸すのがよいのか、不動産会社に確認してから計画を立てることが重要です。
また、土地の面積が少ない場合には、コインロッカーや自動販売機、広告掲載などにも活用できます。立地や、近隣で生活している人の層、利用する人の需要を考えてよりよい活用法を見つけましょう。
土地を駐車場として活用する際のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・初期投資額が比較的安価
・他の用途への転用がしやすい ・駐車場賃貸借契約は他の契約よりも解約がしやすい |
・収益は少額になるケースが多い
・住宅を壊すことで固定資産税が上がる ・駐車場の設備にも固定資産税が課税されることがある |
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3.賃貸で活用する
既に土地上に建築済みの建物の処理にお困りであれば、それらを賃貸に出すという方法も代表的な不動産の活用方法です。また、住宅に向いている土地であれば、そこにマンションやアパート、一戸建てを建築し、貸し出すことができます。
この方法は土地の価値を最大限に引き出し、安定した収益を得るための有力な手段です。マンションやアパート、一戸建てを建築して貸し出す場合でも、建築済みの建物をリフォームして貸し出す場合でも、初期の投資額は大きくなります。また、貸出後も管理の手間はかかるものの、長期的な視点で見れば大きなメリットがあるため、検討する価値が十分にある活用方法です。
メリット | デメリット |
・大きな収益を得ることも可能
・長期間収益を得られる ・相続対策もできる |
・多くの初期投資が必要
・空室の場合は収入が得られない ・管理費などのランニングコストがかかる |
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方法2:売却する
不要な不動産の「売却」は最も一般的な処分方法です。賃貸などの活用が難しい場合は、売却を検討してみましょう。不動産を売却する際、一般的には不動産会社に仲介や買取を依頼します。
不動産会社に仲介を依頼するとは、不動産仲介会社が売主と買主との間を取り持ち、売買契約を成立させる売却方法のことです。
不動産会社に仲介を依頼することで、以下のようなメリットがあります。
・相場価格での売却がしやすい
・煩雑な手続きは不動産会社に任せられる
・ある程度の希望や条件を通しやすい
不動産を売却するときには、買取という方法を選ぶこともできます。買取とは、不動産会社が買主として直接不動産を購入する方法です。
買取には以下のようなメリットがあります。
・売却に時間がかからず、素早い現金化が可能
・資金計画を立てやすい
・契約不適合責任を免責できる
・条件の悪い不動産でも売却できる可能性が高い
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◎売りにくい物件を売却する方法
所有している不動産によっては、立地が悪く需要が低い、建物の状態が悪い、などの様々な理由で買主を見つけることが難しい場合もあるかもしれません。
そのような売りにくい物件は一度、不動産会社に相談して以下のように見直しをしてみることをお勧めします。
売り出し価格を見直す
物件が売れない原因として、価格が市場の相場に合っていないという可能性があります。
周辺の成約事例や現在の市場動向を参考にして、売り出し価格を見直すことが重要です。価格を適正に設定することで、購入希望者の関心を引きやすくなり、売却のチャンスを増やすことができます。不動産会社による査定額に加え、自分でも周辺相場を把握してみましょう。
更地にする
古い建物や使い勝手の悪い建物がある場合、いっそ更地にすることで土地の価値を高めることも有効な手立てです。更地にすることで、購入希望者が自由に建物を建てられるため、需要が高まる可能性があります。ただし、更地にするための解体費用がかかることを考慮する必要があります。解体費を払っても、利益があるかどうかを検討して判断しましょう。検討の際は、不動産会社への相談がおすすめです。
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方法3:相続放棄する
使用や活用、売却が難しい不動産は相続放棄するのも選択肢の一つ。相続の発生を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申請することで相続放棄することができます。ただし、相続放棄をすると、不動産だけでなくすべての財産を取得できなくなるため注意が必要です。遺産の内訳も確認したうえで、よく考えて決断することをおすすめします。
相続放棄のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・自身にとってマイナスの資産を取得しなくても良い
・相続トラブルに巻き込まれる心配がない ・不動産の維持管理費や売却にかかる手間などの負担がなくなる |
・自身にとってプラスの資産も相続できない
・申請期間がある ・申請後の撤回ができない |
また、相続を放棄した場合、固定資産税の支払いは不要になりますが、不動産の管理責任はなくなるわけではないことにも注意が必要です。つまり、管理をしてくれる人が見つかるまでは、相続人が引き続き管理する義務があります。
管理義務をなくすためには、家庭裁判所に「相続財産管理人の選任」の申し立てを行う必要があります。一般的には弁護士が管理人となるケースが多いです。
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方法4:寄付する
不要な不動産の処分方法には、自治体・国・法人・個人などへの寄付という方法もあります。ただし、寄付によって贈与税や譲渡所得税が発生する恐れがあるため、寄付による難しい処分は一般的に難しいといえます。他の処分ができなかった場合の対策として考えておきましょう。
自治体へ寄付するメリット・デメリット
自治体へ寄付 | 国に引き取ってもらう |
メリット
・贈与税や譲渡所得税が課税されない ・無償での寄付が可能
デメリット ・個人の不動産は受け付けてくれないケースが多い |
メリット
・市街化調整区域や農地、山林も引き取ってもらえる ・寄付先を探す必要がない デメリット ・費用がかかる ・引き取ってもらえるのは土地のみ ・引き取ってもらえる土地には条件がある |
法人に寄付 | 個人に寄付 |
メリット
・無償での寄付が可能
デメリット ・寄付した側に譲渡所得税が課税される恐れがある
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メリット
・無償での寄付が可能 ・寄付先の方にメリットがあればスムーズに寄付ができる デメリット ・寄付された側に贈与税が課税される恐れがある |
使わない不動産を処分せず放置するリスク
使わない不動産を処分せずに放置すると、以下のようなリスクが発生します。
・管理の手間や維持管理費などの負担
・空き家トラブルによる賠償責任の発生 ・売却が困難になる |
管理の手間や維持管理費の負担
建築基準法では以下のような条文があり、日常的に使わない不動産だとしても、所有している限り維持管理が求められます。
建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
引用:建築基準法(第8条)|e-Gov法令検索 |
誰も住んでおらず使用されない住宅は劣化も早まるため、「窓を開けての換気」「室内・敷地内の清掃」「雑草や樹木の手入れ」など定期的に適切な管理をしなければいけません。放置することによって、建物の老朽化や自然災害による損傷が進んだ場合には、修繕費用が増加し、雑草やゴミの処理などの管理費用も発生します。
また、不動産を所有していることで、固定資産税や都市計画税が課税される点も注意が必要です。放置状態にある不動産が「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されると住宅用地の特例が解除され、固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍になる恐れがあります。
空き家トラブルによる賠償責任の発生
放置された空き家には、「害虫・害獣の住処になる」「劣化による倒壊の恐れ」「不法投棄や放火、犯罪への利用の恐れ」などのさまざまな問題点があります。これらが地域の景観や治安に悪影響を与えるなどして、トラブルのもととなり、賠償責任が発生する恐れがあるため注意が必要です。被害の程度によっては損害賠償が高額になることも考えられます。
また、放置された空き家や空き地は、不法占拠や犯罪の温床となる可能性があり、特に、不法投棄や放火などのリスクが高まります。
売却が困難になる
不動産を放置して劣化が進むと、それだけ資産価値は下がってしまうため、将来的に売却を考えている場合には大きな損失となります。また、不動産が火災や事件、事故の現場となった場合は、売却そのものが難しくなることも十分にあります。そのため、使用しない不動産を所有しているのであれば、放置せずに早いうちに活用や売却などの対策を講じることが大切です。
Pick up!不動産の扱いに悩んでいる方もお気軽にご相談ください「相続などで不動産を取得したのは良いものの扱いに悩んでいる」という方も多いはず。また、不動産が遠方にあることから、管理が難しく放置してしまっているケースもあるかもしれません。しかし、不動産は所有しているだけで固定資産税などの維持費がかかります。さらに、不動産を放置することで劣化が進み資産価値が下がるだけでなく、近隣トラブルや損害賠償が発生する恐れがあるなどデメリットも多くあるため注意が必要です。
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